住宅に使用される断熱材の主な4つの種類を徹底解説!

2021.10.52023.9.12
家づくりがwakaru
住宅に使用される断熱材の主な4つの種類を徹底解説!

住宅に使用される断熱材は、屋外の寒さや暑さをシャットアウトして快適な室温を保つために欠かせません。さらに断熱材は結露やシロアリによる食害を防いだり、火災による被害を最小限に食い止めたりする効果も持っています。

日々のメンテナンスの手間を減らしてマイホームを長持ちさせるためには、環境に適した断熱材選びが重要です。今回は、日本の住宅に多く使用されている断熱材の概要とそれぞれのメリット・デメリットなどについて解説します。

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1.住宅に使用される断熱材の主な種類は4つ

住宅に使用される断熱材の主な種類は4つ

断熱材は、屋外と屋内の熱移動を遮るための建材です。もし住宅の壁・屋根・床などに多くの隙間があったり、外気温が屋内へ伝わりやすい構造だったりすると、夏は暑く冬は寒い住まいになってしまいます。暑い日や寒い日でも快適な室温を保つためには、壁や屋根などへの断熱施工が有効です。

断熱材を用いて室内の温度変化を減らすことで、光熱費の節約はもちろんヒートショックや冷え性などの予防にも役立ちます。また寒い日でも窓のサッシなどが冷えにくくなり、結露を防ぎやすくなるのもポイントです。結露を防ぐことでカビや腐食のリスクが減り、掃除の手間を減らしつつ住宅を長持ちさせることができます。

現在日本の住宅に多く用いられている断熱材は、「無機繊維系」「木質繊維系」「天然素材系」「発泡プラスチック系」の4種類です。

2.【無機繊維系断熱材】2種類の特徴とメリット・デメリット

無機繊維系断熱材は、鉱物由来の繊維を固めて成型した断熱材です。ダウンジャケットや厚手のニットと同じように、繊維の隙間に多くの空気を含ませることで断熱性を高めます。

代表的な無機繊維系断熱材であるグラスウールとロックウールの主なメリット・デメリットは、以下の通りです。

2-1.グラスウール

日本で最もスタンダードなグラスウールは、ガラス繊維を成型した断熱材です。

メリット デメリット
● 日本国内での採用実績が多く、参考にしやすい
● 無機物系のため経年劣化しづらい
● 防音性が高い
● 耐火性が非常に高く、万が一燃えても有毒ガスが発生しない
● シロアリに強い
● 柔軟性が高く、地震などによる変形に強い
● 材料費・施工費が比較的安価である
● 壁などの増改築がしやすい
● 防湿性が低く、湿気を吸うと重みでずり落ちて隙間ができることがある
● 隙間なく施工するためには、ある程度の技術が必要

グラスウールは比較的安価なうえに軽くて扱いやすく、多くの施工業者が採用しているので施工実績が豊富にあります。防湿性の低さを補うため、グラスウールを袋詰めの状態で施工したり防湿シートで覆ったりする方法が一般的です。

特に木造住宅の場合、グラスウールを用いて耐火性・耐熱性ならびに防蟻性を高めることは大きなアドバンテージとなるでしょう。

2-2.ロックウール

ロックウールは、製鉄時に出る副産物や玄武岩などを固めて作られた断熱材です。断熱材としての特性はグラスウールと似ていますが、若干異なる性質を持っています。

メリット デメリット
● 防音性が高い
● 耐火性が非常に高い
● シロアリに強い
● グラスウールよりも湿気に強い
● 壁などの増改築がしやすい
● 防湿性が低く、湿気を吸うと重みでずり落ちて隙間ができることがある
● 隙間なく施工するためには、ある程度の技術が必要
● グラスウールと比べて変形に弱い
● グラスウールよりもやや高価

岩綿とも呼ばれるロックウールはしばしばアスベスト(石綿)と混同されますが、両者はまったく異なる物質です。またロックウールの繊維はアスベストよりも太いため、アスベストのように呼吸器へ侵入して健康被害を及ぼす心配はありません。

3.【木質繊維系断熱材】1種類の特徴とメリット・デメリット

木質繊維系断熱材は、木質繊維を加工して成型した断熱材です。無機繊維系断熱材と同じく繊維の間に空気を含んで断熱効果を高める仕組みであり、マット状ではなくやわらかい綿状になっています。

木質繊維系断熱材の主なメリット・デメリットは、以下の通りです。

3-1.セルロースファイバー

セルロースファイバーは、古紙やおがくずを加工してホウ酸などの添加物を加えた断熱材です。添加物を加えることで、耐火性・耐熱性や防虫性を高めています。

メリット デメリット
● 防音性が高い
● 耐火性が高い
● 隙間ができにくく、気密性を高めやすい
● セルロース事態に調湿性があるため、湿気に強い
● シロアリなどの害虫に強い
● コストが高い
● 工期が長くなりやすい
● 取り扱っている施工業者が少ない
● 比重が重いため、自重で沈下しやすい

セルロースファイバーは無機繊維系断熱材とほぼ同等の断熱材を持ち、さらに環境にもやさしいことがメリットです。ただし無機繊維系断熱材と比べてコストが高く、国内でセルロースファイバーを扱う施工業者はそれほど多くありません。

4.【天然素材系断熱材】1種類の特徴とメリット・デメリット

天然素材系断熱材は身近な天然素材を用いて作った断熱材であり、羊毛や炭化コルクを主原料とするものが代表的です。化学物質由来の素材を極力使わない無添加住宅には、セルロースファイバーや天然素材系断熱材が用いられます。

ここでは、羊毛由来のウールブレスについて解説します。

4-1.ウールブレス(羊毛)

防虫処理済みの天然羊毛を主原料とするウールブレスは、断熱材としては新しい部類に入ります。

メリット デメリット
● 防音性が高い
● 耐火性が高い
● 隙間ができにくく、気密性を高めやすい
● 羊毛自体に調湿性があるため、湿気に強い
● シロアリなどの害虫に強い
● 国産品が少なく、コストが高い
● 工期が長くなりやすい
● 取り扱っている業者が少ない

現在国内で流通している羊毛のほとんどは、ニュージーランドなどの海外から輸入されています。そのため、セルロースファイバーよりもさらにコストが上がりやすい点に注意が必要です。

5.【発泡プラスチック系断熱材】4種類の特徴とメリット・デメリット

発泡プラスチック系断熱材は、無数の気泡を含むプラスチック素材を用いた断熱材です。

「発泡プラスチックは断熱性が高い」と言われますが、断熱性は素材の熱伝導率以外の要素によっても左右されます。いくら熱伝導率の低い素材でも、十分な厚みがなかったり隙間が多かったりすると期待通りの効果を得ることができません。

発泡プラスチック系だけに限らず、断熱材を選ぶ際は素材だけでなく厚みや施工方法なども考慮することが重要です。ここでは、4種類の発泡プラスチック系断熱材について解説します。

5-1.硬質ウレタンフォーム

外張り断熱でよく用いられる硬質ウレタンフォームは、ポリウレタン樹脂に発泡剤を加えてボード状に成型した断熱材です。また、壁などに直接吹き付けて施工することもあります。

メリット デメリット
● 発泡プラスチック系断熱材のなかでは柔軟性が高い
● 壁に吹き付ける場合は、隙間なく施工することで機密性を高めやすい
● 耐火性が低く、燃えると有毒ガスが発生することがある
● シロアリに弱い
● 歴史の浅い素材のため、経年劣化による断熱性能の変化が未知数

5-2.フェノールフォーム

フェノールフォームは、フェノール樹脂に発泡剤などを加えてボード状に成型した断熱材です。熱を加えると硬化し、グラスウールとほぼ同等の耐火性を誇ります。

メリット デメリット
● 耐久性が高い
● 耐火性が高く、有毒ガス発生のリスクも低い
● 水を吸いにくく、結露を防ぎやすい
● 発泡プラスチック系断熱材のなかではコストが高い
● シロアリに弱い
● 歴史の浅い素材のため、経年劣化による断熱性能の変化が未知数

5-3.ビーズ法ポリスチレンフォーム

発泡スチロールとしてよく知られるビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)は、ポリスチレン樹脂製の発泡ビーズをボード状に成型した断熱材です。

メリット デメリット
● 水を吸いにくく、結露を防ぎやすい
● 軽量で加工しやすく、衝撃に強い
● 発泡プラスチック系断熱材のなかではコストが低め
● 耐火性はそれほど高くなく、燃やすと大量のススが発生する
● シロアリに弱い
● 歴史の浅い素材のため、経年劣化による断熱性能の変化が未知数

5-4.押出法ポリスチレンフォーム

押出法ポリスチレンフォーム(XPS)は、ポリスチレン樹脂を押し出してボード状に成型した断熱材です。材料はEPSとほぼ同じですが、気泡が小さいためより固くなります。

メリット デメリット
● 水を吸いにくく、結露を防ぎやすい
● 軽量で加工しやすく、衝撃に強い
● シロアリに弱い
● 耐火性はそれほど高くなく、熱を加えると収縮して断熱性が落ちやすくなる
● 歴史の浅い素材のため、経年劣化による断熱性能の変化が未知数

6.木造住宅の断熱工法|「充填断熱」と「外張り断熱」について

木造住宅の断熱工法|「充填断熱」と「外張り断熱」について

木造住宅の断熱工法は、充填断熱と外張り断熱の2種類に大別されます。

多くの住宅で採用されている充填断熱は、柱などの間の空間を断熱材で埋める工法です。躯体内部に施工するため断熱材用のスペースを確保する必要がなく、コストを抑えやすくなります。ただし断熱材と柱などの間に隙間ができやすく、結露防止フィルムなどによる防湿対策と高い施工技術が必要です。

外張り断熱は、建物の躯体の外側を断熱材で覆う工法です。柱などをよける必要がないため隙間ができにくく、気密性や防湿性を高めやすくなります。一方で風や地震などによる刺激を受けやすく、断熱材を厚くすると室内が狭くなりやすいことがデメリットです。

充填断熱と外張り断熱はそれぞれ一長一短があり、どちらの工法が合うかは状況によって異なります。信頼できる施工業者に相談して、住む人のニーズに合った工法を選びましょう。

まとめ

日本の住宅には、鉱物・天然素材・発泡プラスチック由来の断熱材が多く用いられます。

基本的に断熱材の熱伝導率が低いほど熱を遮断しやすくなりますが、熱伝導率の数値だけで断熱材の良し悪しを判断することはできません。実際の断熱性は断熱材の厚さや施工方法によって変動するうえ、湿気・火気・虫害などに対する強さも考慮しなければならないためです。

施工業者によって、得意とする断熱材の種類や施工方法は変わります。マイホームを建てたい場所の環境やニーズに合わせて、信頼できる業者を選びましょう。